Bikers Hi

英語圏に料理ファンが居るので英語使わせてもらってます

ジャーマンチャネル 2


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ナオミはファクトリーにカメラを持って佇む私を目にすると、メットで蒸れたショートボブの髪を軽く振りほどくようにニコッと笑った。 
お客と思ったのだろう、ハーイとグローブを外した手を軽くあげてジャケットから書類と何かの部品を取り出すと足早にホセに渡した。
ホセと書類を見ながら何か説明している。
ホセはいくつか質問すると彼女の答えに満足そうにうなづいた。

撮影の手を止めて二人を眺めていた私にホセが手で呼んでナオミを紹介した。
ナオミはホセのファクトリーをバイトで手伝っていた。
もともとWEBデザイナーとフリーでモデルの仕事をしていたらしいが、ホセの店からバイクを購入した事が縁で今に至っているらしい。
ホセもナオミのような美女が男っぽいバイクファクトリーに居れば、雰囲気も和み嬉しそうだ。
事務的な事と、ちょっとしたデリバリーなど彼女は器用にこなすらしい。
今回も、急ぎのパーツをWEST HOLLYWOODのホセの友人の工場に見つけて、バイクで取に行っていたらしい。

ナオミは私がカメラで飯を喰っている男だと知ると、いきなり悪戯するような視線でいくつかポーズをとってみせる。
背景にうずくまるたくさんのバイク、据え付けの機械や、壁に整然と並んだ何かの工具、赤く巨大なツールBOX、
その中でスリムな黒革のライディングジャケットにぴっちりしたこれも濃いダークブラウンの光沢ある革パンツ、
ブーツは女性用のファッションブーツなのか、濃いダークレッド。
モデル業もやっているだけに、わざとポージングしながら挑むように私の目を見る。

絵になる。

機械や工具、メッキパーツやバイクの放つオーラーの中でこの女性は更に生命感を秘めて、跳躍する寸前のワイルドキャットに見える。
野生の中にどこか母性の優しさが見える気がする、若い女鹿にも見える。
クールな感じではなく、柔らかく見えるのはタイトなシルエットの中の女性的なふくらみからか。
ナオミはチャーミングな要素が深く幾重にもある女性のようだ。

思わず、カメラを構え画角を気にせずにシャッターを切った。
10ショットくらい付き合ってくれた。
ホセはマグカップを時々口へ、しょうがない奴らだとあきれ顔に微笑をもって眺めていた。

「私のモデル料は・・・後で請求するわよ・・・」
「・・まだ契約してないよ、これはカメラテスト・・・あはは」
「あら?・・・・いつ採用かしら?」
ポージングを解くと、腰に両手をあてて悪戯っぽく睨んだが目は嬉しそうに笑っている。

ホセが割り込んで
「おいナオミ、店の事務仕事優先で頼むぜ!本業ならその後で頼むよ〜〜〜俺は老眼で細かい字最近ダメなんだよ」
「はいはい、おじーーーちゃま、書類関連は今日中に仕上げるわ」

ナオミは、さっき会ったばかりの私の心にすんなりと溶け込んでいった。
カメラを通した何かがナオミに感じ通じたのだろうか?
まだ私がどういったたぐいの写真を撮る人間か、何の説明も聞かずに質問すらせずにモデル志願しているのかと考えてしまう。





おおかた依頼されたLAのバイクファクトリー画像はイメージ通りに撮影できていた。
もう少し、カット数を重ねようかと思っていたのだか、ナオミの登場で私の何か、リズムみたいなものが変化した。
これ以上ファクトリー内の撮影はどこか無理が出そうな気がした。
依頼の件は撮り終えたカットから厳選してクライアントへファイル送信しようかと思った。
フィルム時代を考えると、現代は格段に便利だ。


[



「ナオミ、レストランロー行くんだろ、悪いがあいつの工場までチェック届けてくれないか?」
「OK・・・・、そのままアパートへ戻っていいなら・・・」
「ああ、いいさっ、今日は日本から客人が来てるから、俺の代わりに一緒に観光ツアーでも案内してくれ」
ナオミは私の方を向きながら言った。
「撮影の仕事なら、スネーク見ておいた方がいいわね!」
「スネーク・・・・・・?」

私は何かスラングかとその時は思った。

「おおおっ!そりゃいいや!あそこはCOOLだぜっ!整備したキングが有るから貸してやるぜ!」

LAのファーマーズマーケットの側に部屋を取っていた。
そのモーテルから歩いてマーケットに行けた。
ここも観光地化していたが、アメリカ的な絵が撮影できるので個人的に好きだ。
どこの国に行っても市場は活気が有って魅力に満ちている。
人々の生活感が溢れその国の個性が出る。
今回の取材でも、イメージショットとして押さえておくには最適なロケーション。
クライアントの依頼の中には無かったが、何枚かこれも絡めようかと思っていた。
今朝も散歩でいいカットを撮影できていた。
ホセのファクトリーまではレンタカーで来ていた。

「うれしいね!・・・セニョールホセありがとう、こんな美人のツアーコンダクターなら毎日でも喜んでついていくよ」
「あら・・・お上手だ事・・・・私はお嬢さんのツアーガイドとちょっと違うのよ」
うれしそうに私を試すような目で微笑を浮かべて、ナオミは奥の事務所へ消えた。

ホセは2012年式のロードキングをゆっくりと押し出してきた。
ミッドナイトパールのタンクが夜の海に光る漆のような、どこか深い青味が沈んでいるようで美しい。
ツーリーングファミリーなので広大なアメリカンロードには最適だろう。
仕事柄ホセは何台も自分用のバイクを所有していた。
メットは撮影用に持ってきたBUCOのバブルシールド付が有るからそのままでいい。
サイズは・・・こちらで乗る事も考え自分にマッチしたものを選んでいた。
LAの陽光は強いのでいつも愛用しているBOBSTER CHERGER スモークが私の目には優しい。

「ハーイ・・・お待たせ!」
事務所から出てきたナオミは上下のライディングウェアを着替えていた。
先ほどのイメージが強かったので、目にした私は驚いた。





つづく









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OSとIEの相性の問題みたい? すんませんな〜〜。