ジャーマンチャネル  第2章 2

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部屋のKEYを差し込んだがドアを開けるのもぎこちない。
まだ倉庫然とした感じの生活感の無い部屋にナオミを入れるのはちょっと恥ずかしいような気がした。

「あら、小さいスペースだけど・・落ち着いたカラーでいいんじゃないの?」
ソファーベットの端にちょこんとお尻を乗せて、子供みたいに少しはねている・・・
目が合ってくすりと笑った、「リネンを買わなきゃね、ベットカバーは濃いダークブルーの落ち着いた感じがいいな〜^」
部屋のベージュ系の壁面とイメージを重ね合わせているかのような視線で言った。
「おいおい、ナオミの趣味でこの部屋をインテリアするのかい?まるで同棲をするカップルみたいじゃない・・あはは〜」
「・・・ナイトがお望みなら、プリンセスもちょっとは考えてみようかしら?・・・うふふっ・・・」
さりげなく返された返答も、軽妙でおもしろい。
本気に思っているのか、社交辞令か?解らないが、ナオミとの会話はうきうきする。
実はまだナオミの事は良く知らないのだ・・・
しかし、もう長く知り合って付き合っているような女友達という感じもする。
ごく自然に自分の心に溶け込んでいて、一緒に居る事が当たり前のような、懐かしいような、不思議な安堵感が有る。

ナオミは立ち上がってキッチンの戸棚やシンクを覗いている。
「ねえねえシェフ?落ち着いたら私の為にディナー作ってここで食べていい?」
「えっ?・・・今度はシェフにされて、ディナーの催促かい・・・喜んでプリンセスナオミ様の為なら腕をふるうよ」
「ほんと!約束よ!2人で食事もいいわね」
「とてもお世話になっているので、どこかレストランにお連れして食事でもと思っていたんだ・・・」
ナオミは微笑を浮かべながら優しく歌うように言った・・・
「…あなたの料理で・・・その方がうれしいわ」
長いまつげが少し揺れて瞳がうっとりと輝いて見えた。
瞬間視線が止まって、どきまぎしてしまう。
女心の真意が読めない・・・そんな野暮な男のつもりはないが、この状況での会話が現実味を帯びてくると
妙に慌ててしまっている自分が居た。
「あっ・ああ・・落ち着いて部屋の整理がついたら是非ご招待したいです。でも・・俺と二人きりでいいの?」
「・・・・・んっ?・・・・だって・・・この部屋狭いでしょ!」
ナオミは私の顔をまじまじと見て、げらげら笑っている。

カーテンや必要な収納BOXのサイズをメモした。
引っ越し人生で、転々と住居が変わる生活を送ってきた。
経験上、何が必用か漠然とは解るのだが、日本の部屋の作りと異なりファーニッシュでそこそこ家具や冷蔵庫も備え付けなので勝手が違う。
ナオミの提案で近所のインテリアSHOPまで行く事になった。
1時間くらいなら付き合ってくれるそうだ、2人で購入品目を見てから私自身をWEST HOLLYWOODのあのファクトリーまでデリバリーだそうだ・・・
ロードキングをピックUPしなければならない。

シングルライダースを羽織、グローブをポケットにねじ込みヘルメットを手にした。
ナオミの乗ってきたフォーティエイトでタンデムで行く事になった。
「あれ・・?そう言えば、シングルシートだよねフォーティーエイト・・・?」
「・・・あっ!・・・うふふっ・・・ホセがシート変えたカスタム車両だぞって、出る前に言ってた・・・意味が、今解ったわ!」
ナオミが小さく息を呑んでホセの配慮に驚き、うれしそうに頷きながら笑っていた。


部屋をロックしてパテオに面した回廊を歩く、ナオミが自然に腕にぶらさがってきた。
「ジェントルなライダーはレディをエスコートするものなの!」
「あっ・・・・ごっ・・ごめん・・・」
子供のように笑いながら、体を押し付けてくる。
半分体重を預ける形で歩く、腕に女性のふくらみを感じて照れてしまうが平静を装った。
そのまま狭いエレベーターに乗り込む。

「まだ・・・お互いの事・・・知らない・・・」
ナオミはひとり言のようにつぶやいた。
「あっ・・・うん・・・そうだね・・・」
ナオミの一言が何を意味するのか、何を期待しているのか、こんな狭い空間で意味有り気なつぶやきは魅惑のオーラを纏って
体にまとわりつく。
それもぴったりと半身を私に寄り添って・・・・
意図的な感じがしないのだが、単に言葉の悪戯でのつぶやきとは思えない重さが有った。

ドアが開いた・・・
エレベーターBOXでのほんの短い時間が芳醇なワインの香りを静かに放ちながら滓のように沈む。

体を寄せながら広いパーキングを少し歩いたが、二人とも無言だった。
言葉を発せなくても、ハートがどこかシンクロして少しだけ震えた気がした。
沈黙の意味が甘美で、無限の旅の入り口に放り出されたのだ。



つづく・・・・










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