Bikers Hi

英語圏に料理ファンが居るので英語使わせてもらってます

ジャーマンチャネル 7

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ナオミはホセに頼まれた用事も有るので、エマに伝えてマリブのこの家から移動しようと言った。
エマ夫婦は少し残念そうなそぶりだったが、samが私のコンドミニアムレントの件をエマに伝えると
エマの顔がパッと明るくなって、私にHUGしてきた。
「まあ、この人もたまにいい提案するもんだわ、ナオミとまた一緒に近いうちに会えそうね!
あなたたちならいつでも大歓迎、ナオミの使っていた部屋もそのままだし・・・・この人といつも2人じゃ
刺激が無くてね・・・・あははは〜^」
「おいおい、つまらん爺さんで悪かったな奥さん・・・まあ我々の娘がいい飲みダチとシェフを見つけて来てくれた
ようなもんだ」
samも酒で少し赤くなった顔で嬉しそうに言った。

玄関前でsamはナオミとまたHUG、その二人にエマが抱き付いている。
見ていると本当の親子のようで微笑ましい、里帰りした娘をまた送り出すファミリーの風景だ。

「今日は突然お邪魔して、本当に素敵な時間を過ごすことが出来ました、ありがとうございます」
samはナオミをエマに預け、大きな手のひらで私とがっちり握手した。
「では、レントの件で待ってるぞ・・・来てくれてうれしいよ」
「はい契約に向かいますので、よろしくお願いします」

ロードキングに跨りヘルメットを被った、ついサングラスをかけてしまったが、外は闇に包まれている。
革ジャンの内ポケットにしまいイグニッションON。
重低音のマフラーがマリブの丘にこだました。
ナオミは既にスラクストンに跨り、ゴーグルをかけて私を振り返っていた。

丘陵からも見晴らしがいいので夜の闇に沈む太平洋が見えたが、海岸線を走るパシフィックコーストHWYのヘッドライトの軌跡が光の帯となって
沿岸の境界を照らし出していた。
丘に佇む洒落た邸宅のベランダからも光が洩れ、シルエットが夜の空気をどこかしっとりと滲ませていた。

ナオミがスロットルを開け滑り出した。
ヘルメットの中で白い歯がひかり、エントランスの照明で反射したゴーグルの中の瞳が、エマ夫婦にしばしのお別れを告げた。
エマとsamは腰を抱き合って佇み、いつまでも手を振ってくれた。
私は深く一礼してからスタートし、ミラーで二人の姿が見えなくなるまで視界の隅で確認していた。

ナオミは軽快に飛ばしてパシフィックコーストHWYに出た。
サンタモニカを目指して走る。
丘陵地帯のマルホランドも素敵だが、海岸端のこの道も面白い。
レストランやマリンSHOP、サーファー関連のピックUPトラックも多い。
サインボードやネオン管が美しく、夜の走行も独特の光が流れ過ぎ海風混じりの微かな香りも、日焼け止めのサンタンローションの香料が
含まれているような、日中の陽光の名残も感じてしまう。

都市部に向かうとさすがに車も増えてくるが、車線も走り易い道なの時間帯も有るが渋滞には遭遇しなかった。
WestHollywoodに向かっていた。
やがてサイナイホスピタルの広大なエリアに差し掛かると、低層住宅が木々の間に点在するブロックに入った。
一見、小さい映画スタジオのように見えたが、ナオミが停車してインターホン越しに話し、大きなスライドドアの横
セキュリティーロックが解除されたドアから中に入った。

照明は消されていたが、通路部分の誘導灯が照らす範囲は識別できた。
「少しここでまってて・・・」
ナオミはそう言うと、奥のオフィイスと思われる部屋へ歩いて行った。
内部は思ったより天井が高く広い。
壁面に工作機械が並び、シートを掛けた車が整然と何台も並んでいた。
作業スペースには、丸いクラシックなシルエットのポルシェと思われる車体がジャッキUPされていた。
パーティションで区画されたエリアがあって、そこはオートバイのエリアのようだ。
ドアのウインドウ越しに顔を近づけて見てみると、天窓からの月光が静かに降り注いでいて、いくつものバイクが
黒くうずくまり、エンジンのメッキ部が鋭利な刃物のように鋭く光っていた。
夜に眠る野獣の群れのようだ。
どこかその穏やかな寝息が聞こえそうで、無機質なマシンが鼓動を秘めて命を燃やしているかのような錯覚を覚える。

「おまたせっ!ここのオーナーが居なかったけど、奥様が事務仕事してたので用事は済んだわ」
「ここも凄いガレージだね!」
「ここはお金持ち相手のレストア専門のガレージなのよ、ホセも時々手伝ったりしてるので姉妹店みたいなもんね。
どちらかというとクラシックカーが専門なのだけど、オートバイを持ち込むマニアも多いのよ。何といっても、経費に糸目を
付けないからかなりいい商売になるのね」
「へーーそりゃいいね!どうりてすごいマシンが並んでいると思ったよ」
またガレージ内を詳しく覗いてみたくなった。

ナオミはグローブをはめだして言った。
「今度、ゆっくり昼間に来ましょうよ、見学させてもわえるわ」
「OK、ありがたいな、ナオミツアーコンダクターは優秀だね」
ヘルメットを被りながらナオミはくすくす笑っている。
「今日の私の仕事は終わったから、そろそろ引き上げるわ。あなたこれからアナハイムのホセのファクトリー行の?」
「ナオミはどうするんだい?」
「美味しいワインを頂いて、バイクの運転はOKだけど、少し眠くなったので家へ帰るわ」

まだ、少し一緒に過ごしたかったが思えば今日会ったばかりだった。
どこか古くからの仲の良い女友達みたいな意識になっていた。
そう思い込ませる、心の奥まで浸透するナオミの微笑に魅せられていた。
活き活きした目の動き、少しハスキーな声・・・
しぐさの一つ一つが大人の女性だが可愛らしさも秘めていて、側に居ると心地よく私をくすぐる。

「・・・ホセのファクトリーには行かないのかい?」
「私のHomeはこのエリアから遠くないから・・・」
「よかったら送るよ・・・」
ナオミはくすりと笑っていった。
「後ろからのエスコートはもう十分よ、今日は楽しかったは・・・とても・・エマやsamにも会えたし・・・
・・・そうそう、あなたのPASTA最高だった、またお料理食べさせてね」
ナオミは私の方に少し背伸びするよう近づいて頬を寄せた。
顎のあたりに口づけしてきた。
ふくよかなパヒュームの香が微かに漂い、リップステックと濡れた唇の感触がうれしく少し照れた。
「あら・・?少しはシャイなところが有るのね・・・・可愛いロードキングさん」
「おいおい、大人をからかうんじゃないぞ・・あはは〜〜」
ナオミは悪戯を見つけた姉のように、少しだけ勝ち誇った表情をしてけらけら笑っている。

「さて、俺も今日はsamさんと付き合っていつもより飲んでいるから、モーテルの方に帰るよ。これから一人で
アナハイムへは寂しいし、美女のエスコートも今日は断られたし・・・」
「おあいにくさま・・・ジェントルマンなライダーさんには、またいつか機会が有るわ・・・see you〜〜!」
ひらりとスラクストンに跨ると、2〜3回スロットルを開け合図するように発進させてブロックの先へ消えかけた。
ナオミは名残惜しむように、見送り佇む私にハザードを数回点灯させて、すっとコーナーから消えて行った。

急に夜の暗さを感じて、見ず知らずの土地に一人取り残された寂寥感が少しだけ取り巻いた。
私は、この国にとってはエイリアンであり旅する旅行者の一人に過ぎない。
今日一日だけで遭遇し、数々の厚遇をもたらせてくれた人々の暖かい空気もナオミが去るとどこか夢の中の物語のように
心の中が委縮し始める。
私は、そんな感情を振り払うようにエンジンをかけギヤを落とした。



つづく






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OSとIEの相性の問題みたい? すんませんな〜〜。



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